公的年金の繰下げ受給には十分注意を!
- ファイナンシャルプランナー村川賢
- 6月14日
- 読了時間: 4分
原則65歳から受け取る公的年金を老齢厚生年金、老齢基礎年金といいますが、これを早めて60歳から受け取ることも、遅らせて66歳以降で受け取ることもできます。
ただし、早める場合(年金繰上げ)は0.4%/月の減額、遅らせる場合(年金繰下げ)は0.7%/月の増額となり、その受給額は一生涯続きます。
65歳以降でも働いて、「受給を遅らせて増額して受け取りたい」と考える人も多いと思われますが、受給の仕組みや制約条件を知らないと思わぬ損をしかねないので注意が必要です。

1. 老齢厚生年金と老齢基礎年金の繰上げ、繰下げルール
年金繰上げの場合、老齢厚生年金と老齢基礎年金は同時に行う必要があります。
一方、年金繰下げの場合では、老齢厚生年金と老齢基礎年金は別々に繰下げることも可能です。
繰上げ、繰下げとも1ヶ月単位での申請となり、繰上げの場合は60歳から受給開始(0.4%×60か月=24%減額)、繰下げでは75歳まで受給を遅らせる(0.7×120か月=84%増額)ことが可能です。
ただし、65歳以降66歳未満は待機期間といって、その間での繰下げによる増額はできないので注意が必要です。
また65歳以降に繰下げ受給する場合で、70歳までは65歳に遡って一括で年金を受け取ることも可能です。
ただしその場合は年金額の増額はありません。
ところが70歳以降で75歳までは5年間遡った時点での増額した年金額で5年間分を一括で受け取ることが可能となりました。(特例的な繰下げみなし増額制度)
2. 年金受け取り総額の損益分岐点
日本人の平均寿命は厚生労働省の発表によると2024年において、男性が81.09歳、女性は87.13歳です。
しかし日常的に制限なく自立して過ごせる健康寿命となると、2022年時点で男性が72.57歳、女性で75.45歳になっています。
これらの数値を踏まえて、繰上げと繰下げが得なのか損なのかを公的年金受給の総額グラフで表してみました。

3. 加給年金がある場合は受給停止に注意
配偶者が65歳未満の場合は、配偶者が65歳になるまで加給年金(現在35,300円/月)を受給することができます(他に条件あり)。
年額423,600円ですから大きな金額です。ただし老齢厚生年金を繰下げて受給する場合にはこの加給年金は受給できません。
しかし老齢基礎年金は別です。
ですから老齢厚生年金は65歳から受給し、老齢基礎年金だけを繰下げて受給するというワザを使えばこの加入年金も一緒に受給できます。
4. 在職老齢年金制度による年金減額には注意
65歳以降になっても働いて給料を多くもらう人は、その金額によっては同時に受け取る年金を減額、もしくは全額カットされる制度があります。
これを在職老齢年金制度といいます。
2026年度では支給停止される調整額が65万円となりました。
減額される年金額は以下の式となります。
(A+B-65万円)÷2= 減額される年金額
A=総報酬月額相当額=(給与+賞与)÷12ヶ月
B=基本月額=老齢厚生年金(加給年金を除く)の月額
A+Bが65万円に満たない場合は減額されず、計算結果(減額される年金額)がBを超える場合は全額カットとなります。
(例)老齢厚生年金の月額=15万円、総報酬月額相当額=70万円の場合
(70+15-65)÷2=10 となって、老齢厚生年金月額は15万円→5万円に減額されます。
5. 遺族年金には繰下げによる増額は反映しない
老齢厚生年金の受給権がある人が亡くなった場合、配偶者などの遺族はその老齢厚生年金額の概ね3/4(75%)を受給することができます。
この場合、老齢基礎年金は含まれないのと、配偶者が既に年金を受給している場合にはそれとの調整額になるので注意が必要です。
さらに、年金を繰下げ受給にして本人が受け取っていない場合でも、遺族年金の元になる年金額は繰下げて増額した金額ではなく、本人が65歳時点の年金記録から算出した金額となります。
つまり遺族年金額は年金繰下げでも増えません。
6. 税金や社会保険料の増額にも注意
一般的には受給する年金からは税金(所得税や住民税)や社会保険料(国民健康保険料や介護保険料)が引かれます。
繰り下げ受給にして年金額を増額しても、増えた金額にともなって税金と社会保険料も増えるので注意が必要です。
まとめ
老後の生活には年金が欠かせません。
厚生労働省の「国民生活基礎調査」などの最新データによると、高齢者世帯のうち公的年金のみ(所得の100%が年金)の世帯は41.7%となっています。
しかし公的年金の制度は複雑で、思い込みで受給すると思わぬ損をしてしまうことになりかねません。
また老後の生活を豊かに暮らすためには公的年金のみでは難しいのが現状です。
2019年に金融庁の審議会が「老後2,000万円問題」として、老後に公的年金のみで生活するには2,000万円不足すると発表して大きな社会問題となりました。
今後も物価の上昇などにより公的年金のみの生活はますます苦しくなります。
老後を豊かに安心して暮らすには、資産運用などで公的年金以外の収入源を積極的に確保するすることが重要です。


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