ファイナンシャルプランナー村川賢

2022年12月10日3 分

備えておきたい認知症への事前対策

総務省統計局の発表では、日本の総人口における高齢者(65歳以上)の割合は29.1%と前年に比べて0.3ポイント増えて、過去最高となりました。

そして、この割合は増え続け、2040年には35.3%になると見込まれています。

また、厚生労働省の発表によると、2020年の日本人の平均寿命は、男性が81.41歳で世界第2位、女性が87.45歳で世界第1位の長寿国となっています。

長寿国であることは良いことだと思いますが、一方では高齢者が認知症になる割合も増え続けています。

●認知症の判定は?

認知症の主な症状は、もの忘れが激しくなり、ついさっきまでのことが思い出せないなどですが、症状の進行段階を追ってSCD(もの忘れの自覚があるが周囲に気付かれない)→MCI(もの忘れの自覚があり周囲が気付き始める)→認知症と判断されます。認知症初期段階のSDCチェックリストを4つほど挙げますので、その兆候がないかチェックしてみてください。

1.今やろうとしていることを忘れる。

2.身近な知り合いの名前が思い出せない。

3.家にあることを忘れて、同じものを買ってしまう。

4.表現したい言葉が直ぐに出てこない。

●認知症になると契約ごとができなくなる

認知症になると、もの忘れだけではなく、判断力も低下しますから契約ごとができなくなります。

相続関連では、遺言書が書けなくなったり、書いても後に裁判となった場合には無効となったりします。また、配偶者が亡くなり、親族で遺産分割協議をするにあたっては、代理人(成年後見人など)を立てる必要があります。

身近なところでは、銀行からお金を引き出せなくなったり、保険を解約できなくなったり、自宅を売却して老人ホームに入りたくてもできなくなったりします。

●認知症を根本的に治す薬はない

認知症の中ではアルツハイマー型が68%と最も多く、これは脳にアミロイドベータというタンパク質が貯まり、神経細胞を死滅させるのが原因です。

根本的に治す治療薬はなく、症状を遅らせる薬がやっと認可されてきました。認知症にならないためには、生活習慣を改善することが良いと言われていますが、自分を含めて日常生活や食生活を変えることは困難だと思います。

しかし、認知症に備えて事前の対策をすることはできます。認知症になってからでは手遅れになるので、事前の対策が重要です。

●認知症への事前対策

代表的な対策を3つ列挙します。

1.遺言書を書く・・・認知症になる前に遺言書を書いておきます。遺言書には自筆証書遺言と公正証書遺言があります。自筆証書遺言は自筆で遺言を書くので費用はほとんどかかりませんが、決まった書き方に従って書かないと無効となります。公正証書遺言は、公証人が遺言者から聞き取った内容に従って、承認2人のもとで遺言書を作成します。一般的には数万円~十数万円かかりますが、確実に遺言を残すためには推奨します。

2.任意後見人を決めておく・・・

認知症になった人の権利を守ったり、代理で契約等をおこなったりする制度として成年後見制度があります。

認知症を発症した後で代理人を立てる必要が出た場合などでは、親族などが家庭裁判所に申請して法定後継人を任命してもらいます。

この場合は、ほとんどが弁護士や司法書士がなります。法定後見人には毎月2万円~5万円を費用として払い、亡くなるまで一生払い続けなければなりません。

しかし、認知症になる前ならば、任意後見制度を使って、子どもや他の親族などを後見人に指定しておくことができます。こうしておけば、後見人に費用を毎月払う必要もなくなります。

3.家族信託を契約する・・・

信託法に則って、家族で信託契約を結んでおきます。

例えば、親を委託者かつ受益者、子を受託者として家族信託契約(民事信託契約)を結び、財産の管理を子に委託します。

こうしておけば、認知症になった後でも、自宅の処分や銀行からの預金引き出しなどは受託者の子に委託して可能となります。